産經新聞の「マスコミ論壇」その他に寄稿した齒に衣着せぬ時事評論。政治倫理の空念佛を嗤ひ、教育論議の知的怠惰を痛烈に批判する。
伊藤榮樹最高檢次長檢事の「素朴な正義感」を心密かに容認しつつ、私はその知的怠惰を批判した。そしてまた、不道徳ないし沒道徳を法的に罰する事は必ずしもできないから、私は榎本三惠子や小室直樹氏を逮捕せよとも書きもしなかつた。だが、「法は道徳にあらず」といふ事を、最高檢次長檢事すらこれまで一度も考えた事が無かつたらしい。日本は相も變はらぬ知的怠惰の國、「無魂洋才」の國なのであり、私は今更のやうに「暖簾に腕押し」の虚しさを痛感したのである。(本文より)
昭和六十一年三月 地球社 定價2,000圓